園長のつぶやき No.2

2014年9月8日

これから幼稚園選びをするという方にも、今幼稚園ライフを楽しんでいる方にも、「子どもの心に寄り添うとは~」と言うテーマの第2回目「今大切なことは?」についてお話したいと思います。

2 今大切なことは?

まず、子どもの成長には順序があるということです。

当たり前の話ですが、子どもの成長には順序があるんですよね。そしてそれを順序よく、やるべき時にやるべきことをやって大きくなっていく、それが理想的な成長の姿だと思います。

簡単に言えば、たとえば、土台を作ってから家を建てる。当たり前ですね。土台がないと上ものは建てられない。人間もそうです。心の土台をしっかり作ってからでないと、しっかりしたおうちつまり人格の形成は出来ないのですね。

土台を作る時期、これは、俗に「つ」のつく年齢と言われていますが、シングルエイジ、つまり1歳から9歳までだと思います。その中でも、重要なのが皆さんにとっての今、1歳から5歳ぐらいまでだと思います。

それでは今の時期いちばん大切なこと、一番やるべきことは何か?

一番大切なのは、愛着形成だと思います。英語でいうとアタッチメントです。3歳ぐらいまでに、しっかりとした愛着形成を築いてほしいと思います。

今愛着障害の本が結構話題になっています。売れているんですね。愛着障害とはつまり、愛着形成がうまくいかなかったということです。愛着の形成は、子どもの成長の上で、感情面、社会性、対人関係を含めてすべての基本となります。そしてこの年齢で言う愛着形成とは、たいていが母親との二人の関係を指すのです。

愛着形成は子どもにとって、安心の基盤です。みなさんすでに経験済みでしょうが、子どもが立って歩き出してしばらくすると、たいていは人見知りをして、そしてたいていはお母さんの後追いをしますよね。その子にとって、お母さんが見えなくなると大変なことになるのです。まるでこの世の終わりのように泣き叫ぶ場合もありますよね。

なぜそうなるのかといえば、その年齢の子どもにとってお母さんといる時が一番安心でリラックスしていられるわけですので、それが破られるのを恐れるわけです。

なぜ、お母さんといる時が一番安心かといえば、生まれてからずっと子どもは母親を直接的な養育者として認識し続けているからです。この人が絶対的に私を守ってくれる人だ、味方だと分かっているわけです。子どもにとってお母さんのそばにいて、お母さんと遊んで、お母さんの体に包まれている時が、一番居心地がいいのですね。この状態が愛着の形成です。

ところがそのお母さんが視野からいなくなると、乳児の認識力では、お母さんが自分の世界からいなくなってしまう。そこでお母さんを求めて泣き叫んだり、お母さんの姿が見えなくなることを恐れるのです。親の不在に気づいて、わっと泣いて駆け寄る。ベタベタベタベタくっついて、安心してまた遊び出す。

このように接近、接触、再分離を繰り返すことにより、たとえ見えるところに親がいなくとも、心のなかに親のイメージを浮かべることが出来るようになってくる。そして愛着形成がしっかり出来ている子どもは、徐々にひとり遊びをするようになってくるのですね。

つまり子どもが母親との二人でいる関係を充分経験することによってのみ、一人遊びが出来るようになるのです。

ちょっと成長過程の話になりますが、乳幼児期の人間関係を成長の順に書きますとこうなります。

1 母親との二人の関係

2 一人遊び(一人でいられる器量)

3 友達との二者関係

4 グループ遊び

皆さんのお子さん(未就園児さん)は、多分1か2の段階もしくは1と2の間ぐらいではないでしょうか?

先ほど述べた母親との愛着形成とは、1の母親との二人の関係のことなのですね。重要なのは、ここがしっかりしていないと、2番、3番へと進んでいけないということです。母親との愛着形成がすべての基本なのですね。ここを今しっかりとやっておかなければならないと思います。そのためには、「母親と二人でいる経験を充分重ねること」が大切なのです。

人間は愛着形成をまったく持つことなく、大きくなることは出来ません。しっかりとした愛着形成がなされない場合どうなるか?この場合は、ゆがんだ愛着形成が築かれるのですね。これが先に述べた愛着障害です。これを修復するのには、大変な労力がかかることはちょっと頭の隅に入れておくといいでしょう。

たとえば不登校やひきこもりなどは、先ほどの段階でいえば、3から4に進めない状態であり、実は原因が1の、愛着形成の段階の不都合にあることが少なくないのです。

お母さんがそばにいて、お母さんと心行くまで遊んで、お母さんの体に充分包まれている時間。居心地が一番いい時間、またはいい場所。安心感。そういう時を、お子さんと繰り返し繰り返し共有してみてください。